901人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなことを思っていると、先輩の右手が私の左手に乗せられる。先輩を見上げると、先輩は少し不機嫌そうに眉を寄せた。その様子にドキリとする。
「みゆ、付き合ってもない男に抱かれたと思ってたの? あんなに何回も?」
「え、ええっと……」
もう少しオブラートに包んで言ってほしい。
「愛してるとか、好きだとか、きちんと自分の気持ちは伝えてたつもりだけど伝わってなかったって解釈でいい?」
「それは分かってましたけど……それと付き合ってるとはイコールではないと言うか」
「別に俺はね、付き合わずにそのまま結婚でもいいと思ってるよ」
「はい⁉」
ちょ、待って。いろいろ待って!
順序だててほしい。私は、恋愛初心者なのだ。
「でもみゆは、それは嫌でしょう。きっと普通に順序だててほしい、とか思ってるよね」
「なんでそれを!」
「みゆのことなら、なんでもわかるよ」
先輩は苦笑する。そして続けた。「だからね。きちんと付き合ってほしい。もちろん結婚を前提にして。みゆから言われたからってわけじゃないよ。そもそも、今日はその話をしたかったんだ」
その声が凛としててまっすぐ私に伝わってくる。
「……」
「みゆ? 俺と付き合ってくれる?」
最初のコメントを投稿しよう!