9章:彼の事情

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「……お、鳳って、まさか鳳凰グループの鳳じゃないですよね⁉」  そう、鳳とは、鳳凰グループの総帥の名字でもあり、ホウオウ社長も鳳で、鳳凰グループの会社は基本的に鳳一族が経営している。  鳳家、だなんて一般の人からは聞かない名字だけど……。 「そうだよ。父はホウオウの社長だし、ホウオウ副社長の鳳一樹は俺の兄だ」 「だからあんなに仲良さそうに……」  ふと最初の面接で、『健人』と副社長が先輩のことを呼び捨てにしていたのを思い出す。  でも、よく考えてみると、私はあの時はそれどころじゃなかったからすっかり忘れていたのだ。  それにしても、まさか親族だとは思わなかった……。先輩、名字も違うし。  先輩は戸惑う私を見て苦笑すると、 「隠してたわけじゃないんだけど、言うタイミングもなくて」 と言い、続けた。「俺は今の社長の二番目の妻の子ども。ちなみに今は三番目の妻で本当の母じゃない。あと一番目の妻が一樹の母親」  ちょっと待って混乱してきた。  とりあえず、お父さまモテますね?  社長ともなれば選び放題なのかもしれない……。ナンテヤツダ。うちの社長だけど。会ったこともないし、はっきり顔もわかんないけど。
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