9章:彼の事情

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「それに、俺が弁護士になれたのも一樹のおかげだから」 「そうなんですか?」 「これでも一応、鳳家の……父の血がしっかり入っているからね。鳳凰グループへ入る予定で、大学も元々は経営を学ぶ予定だったんだ。でも、ほら、みゆに飛び蹴りされて進路を変えたでしょ? その時、もちろん父は大反対でね」  突然飛び蹴りのワードが出てきて、私は、う……と言葉に詰まる。  まさかお父様にまでご迷惑をおかけする結果になっていようとは……。そこは全く想像もしていなかった。そもそも先輩が鳳家の次男なんて全く知らなかったし! 「……とにかく先のことは分からないけど、俺が弁護士になることは、鳳凰グループにとってもいいことだって、一樹が父を説得してくれたんだ。それに鳳凰は自分がつぐし、問題ないでしょって」  先輩は何かを思い出したようにきゅ、と唇を噛むと、 「だから、俺は、一樹が困ったときは助けたいって思ってるんだ」 とはっきりと言った。
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