10章:変化

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10章:変化

 その日もお弁当を作る時間がなくて、食堂で宮坂さんと昼を食べた。そのあと食堂を出たところで、 「キミ、健人の……いや、うちの新入社員の柊みゆさん、だよね? わかるかな。ホウオウ副社長の鳳一樹といいます」 と声をかけられ、私は驚いて副社長を見上げた。 「……驚きました。私みたいな普通の一社員の名前まで覚えていらっしゃるなんて」 「もともと人の顔の物覚えは良いしね」  ふふ、と楽しそうに副社長は笑う。それから、 「今日さ、健人に用があってちょっと電話したけど、やけにご機嫌で気持ち悪かったよ」 と小さな声で言った。それを聞いて泣きそうになる。  その内容が聞こえていたらしい隣にいた宮坂さんも吹いた。
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