10章:変化

4/18
前へ
/302ページ
次へ
「人の顔を覚えるのは得意って言ったでしょ?」  ふふ、と楽しそうに副社長は笑う。  今でも覚えているなんてすごい。でも、病院に行った理由は今でもあまり大きな声で言えないものだけど……。そんなことを思っていると、副社長はそれ以上それについては触れてこなくてほっとした。 「で、健人と付き合うことになったんだ?」 「なんで知って……」 「うん、もちろん知ってる。それに……」  そして、私の方を見ると、 「ほんと、ごめんね」 とまっすぐ頭を下げて謝った。 「え? えぇ⁉ そ、そんな謝っていただくようなことじゃ……! ってなんで謝るんですか⁉」  私が慌てて胸の前で手を横に振る。そして思わず周りの社員を確認した。  私、この場面を誰かに見られたら、『副社長に頭を下げさせた女』になりかねませんけど⁉  幸いにも周りには誰もいなくてほっとする。なのに、当の副社長は顔を上げると、それを見て楽しげに笑った。 (なに? なんだったの……?)
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

899人が本棚に入れています
本棚に追加