10章:変化

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「そうだ。今度健人と3人で食事でもいかない?」 「……ええっと」 「来週末でも、行こ? 土曜日予定は?」 「えっと……先輩と副社長さえ良ければ、私は暇ですけど」  私が戸惑って答えると、うん、健人にも伝える、と副社長は子どものように楽しそうに笑った。  本当に良く笑う人だなぁ。しかし、その笑顔のせいか、こちらにすっかり打ち解けた気にさせる。副社長なんて雲の上の人だと思ってたけど、そういうところもすごい人だと思った。 「僕ね、柊さんと兄妹になれるといいなぁって思ってるから。ほら、二人が結婚したらそうなるでしょ」 「結婚なんてまだまだですし。そもそも、するかどうも……」  私は言う。確かに先輩にはそう言うことは言われたけど……。  そんなの夢のまた夢くらいに感じてる。  先輩が鳳凰グループ総帥の孫で、ホウオウ社長の息子だと聞いて余計にしり込みしている気がする。  そういう身分の人って、セオリーではご令嬢とかと政略結婚するんじゃないの? 今どきはそんなことってないのかな?  でも、少なくとも、こんな大グループのご子息が、しがない公務員の娘と結婚しようものなら大スクープにでもなりそうだけど……。  そう思ってブルリと身体が震えた。
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