10章:変化

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 先輩に連絡してみようと思っていたけど、それから急に仕事が忙しくなり、連絡できないまま木曜日を迎えた。先輩は先輩で忙しかったらしく、鯉の世話係は突然、知らない人が来たりして驚いた。(餌くらい私に言ってくれればやるのに……)  そして、この日の午後、先輩と新田先生がうちに打ち合わせにやってくる予定が入っていたのだ。  なんだかんだ、付き合いだしてはじめて社内で顔を合わせる気がする。いつも以上に気を付けないと、周りに気づかれてしまっては絶対だめだ、と思って気を引き締めた。  ただ、そんな中でも、宮坂さんという強力な味方がいることは、私にとって安心できるポイントではあったのだけど。  先輩と新田先生が時間10分前にやってきて、少しドキドキとしながら、お疲れ様です、と頭を下げる。 「うん、お疲れ様」  優しい先輩の声が耳の奥に心地よく響く。たった数日会ってなかっただけなのに、その声にニヤけそうになったところで、私は慌てた。  このやりとりは、普通だよね……? 周りを気にしながらも、そのまま二人を会議室に案内する。  その時、新田先生は普通に宮坂さんに手を振っていて、宮坂さんはにこりと笑っている。  このカップル、大人の余裕あるよね。なんだかカッコイイ。真似はできないけど……。
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