10章:変化

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 会議室に入る直前、秘書課の春野さんが、羽柴先生、と言い羽柴先輩の足を止めた。 「今日お時間ありませんか? 少しご相談したいことがあるのですが」  そんな声が聞こえる。春野さんと言えば、確か春野物産の社長令嬢。かわいくて社内でも人気で、確かファンクラブまであると聞く。声も見た目も子リスのようで、私も男なら彼女に告白などされれば間違いなくOKを出してしまうだろうと思う。  先輩は 「この打ち合わせのあとならお時間取れますよ。これが4時までなので」 と言った。それが予想外に優しい声で、私は無意識に眉を寄せて先輩を見てしまった。そして、慌てて顔を下に向けた。 「ありがとうございます。ではまたお迎えに参りますね」  嬉しそうに、跳ねるように、春野さんは帰っていった。その姿にもまた眉を寄せそうになった。
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