10章:変化

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 私は唇を噛むと、 「部長呼んできます。先に入っていてください」 と言うと、踵を返す。  なんだかもやもやとする。さっき、二人の並ぶ様子を見て、心底、『お似合いな二人』というのはこういう事を言うのだろう、となんとなく思ってしまっていたのだ。見た目も、大人の余裕も、家柄もすべて似合っている。  そんなことを思っていると、ちょうどこちらにやってきていたらしい宮坂さんが、それを見ていたのか、 「さっきの秘書課の春野でしょ。狙ってんの見え見えだっての」 と吐き捨てるように言った。 (ね、狙ってるって……)  泣きそうになると、宮坂さんは、あきれたように息を吐く。 「大丈夫だから。自信持ちなさい」  そう言われても、私に自信なんてあるはずもなかった。
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