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「ひゃっ!」
「想像してみて。今、エレベータが停まったら、誰か入ってくるかもしれないね? 俺たち、どんなふうに見えるだろう」
「……!」
私が羽柴先輩を押しても、羽柴先輩は私の手を軽々掴んで、それを束ねてエレベータの壁に縫い付けた。絶対にほどけると思ったけど、その腕の力は強くて私が本気を出して動かそうとしてもピクリともしない。
「ほら、油断してるからこうなるんだよ。みゆ、ずっと会いたかった。会って、話したい事があったんだ」
私はとにかく落ち着こうと羽柴先輩の目を見ないように、自分の目を瞑りながら、
「あ、あ、あ、あ、あの時のこと……すみませんでした……!」
と泣きそうな声で言う。いや、むしろ泣いてる。
今の気持ちは完全に虎に捉えられた兎だ。
手をふさがれては……足しか使えない。
思いっきり蹴り上げようか……そう思って、やっぱりやめた。これもまたあの時の二の舞だ。
相手は弁護士で頭も回る。今度こそ絶対にまずい。
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