10章:変化

15/18
前へ
/302ページ
次へ
「みゆ? どうしたの?」 「ごめんなさい、今日仕事はやいんだった。もう行かなきゃ。着替えるから出て行ってください」  そう言って先輩を部屋から押し出す。  準備をして部屋から出ると、先輩はまだそこにいた。 「送る」 「いらないです」 「でも……」 「いらない!」  思わず恥ずかしいくらい叫んでいた。  なにこれ。自分で気持ちのコントロールが効かない。訳が分からない。泣きそうになった。  その時、先輩が私の手を掴む。  そして父に、すみません行ってきます、と言うと、自分の車の助手席のドアを開けて、私を押し込むようにそこに乗せた。  そして、有無を言わさない声で、 「ほら、シートベルトもして」 「ちょ、なんなんですか! いつもひくくせに!」    そう、いつも私が嫌って言ったとき、先輩は引いてくれていた。  こういう場面で強引にこんなことされたことない。だから私は完全に戸惑っていた。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

899人が本棚に入れています
本棚に追加