11章:もしかして先輩の愛は重いのかもしれない

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 私がつぶやくと、先輩は本当に意外そうな顔で、きょとんとしたまんまるな目をして私を見た。 「……え? 春野さんって?」 「き、昨日、私は先輩の家に行きました! でも、9時過ぎても帰ってこなくて、先輩春野さんから相談受けてたし、春野さんも先輩のこと……」 ―――春野さんも先輩のことが好きそうだったし。  その言葉は寸でのところで飲みこんだ。  先輩は少し戸惑った顔をして、それから、 「相談が伸びたのは確かだけど、そのあと社長につかまってね。それで家に帰ったのは10時は過ぎてたと思う」 と言う。 「……ほんとに?」 「なんでそんなウソつかなきゃいけないの」  確かに先輩の声も、顔も、目も、嘘は言っていないように思える。  それを見て、私は不覚にもほっとしていたのだ。
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