12章:外堀の埋まる音がする

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 明日になれば先輩に会える。そんな金曜の夕方、突然、社内で 「柊みゆさん」 とフルネームで声をかけられた。  ふと振り返ると、目の前に見慣れた人。  鯉の世話係(代理)の、眞城さんだった。 「……眞城さん? どうしてここに」 「一緒に来ていただけませんか」 「でも……仕事中ですし」 「仕事以上に大事なことです」 「……はい?」  そう言われて訳の分からないまま、ずるずると引き摺られるようにエレベータに乗せられ、眞城さんは最上階のボタンを押した。
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