12章:外堀の埋まる音がする

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「……欲しかったって」 「でも、そうも言っていられなくなったのです」 「それはどういったことですか」  私が言うと、社長は少し考えてから私の目をまっすぐ見た。  その凛とした目に引き込まれそうになる。  そのとき、意を決したように社長は口を開いた。 「兄の一樹は昔の病気が原因で、子どもがもうけられないんです」 「え……」  それに驚いて後ろにいた眞城さんを見ると、眞城さんも頷く。 「だから健人は、結婚となると、鳳凰グループの後継ぎを生んでもらうことになる」
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