12章:外堀の埋まる音がする

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―――で、うちはね……。まぁ、ちょっと色々あって、俺には子どもが必要でさ。あ、もちろん今すぐじゃないよ? 将来的に、って話。  最初に不能の話をうち明けられた時の、先輩の言葉を思い出す。  『子供が必要』ってこういう事だったんだ……。  戸惑う私に畳みかけるように社長は続けた。 「少々奇妙に感じるかもしれませんが、うちはこの血が大事なのです。鳳の血が流れていることがなによりも大事で……。これまでそうやって栄えてきた歴史がある。鳳の血が途絶えることが一番の問題なんです」  そしてさらに続けた。「実は、私自身は一人っ子でして……。私自身も数年前に病気で手術をして、もう子をもうけることはできない。まぁ、私の場合は、これまでいろいろな女性を傷つけた因果応報の部分もあるのかもしれませんが」 (って社長、自分がまだ大丈夫だったら自力で何とかしようと思ってたの⁉)  混乱した頭でそんなことを思う。いろいろな意味で、オソルベシ、社長。
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