12章:外堀の埋まる音がする

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「親としてあの子には何もできなかった。それくらいの思いはかなえてやりたいと言う親心です。だからあなたが身分差や家柄の差から、気に病んで結婚を諦めることはありません」  心なしか、感動的なバックミュージックが聞こえる気がする。  え、これ、どこが感動的なシーンなの。誰か教えて……。  もしかして身分差から私が先輩との結婚ができないと思い悩んでいると思われてる⁉  確かにその側面はないことはないけど……。 「親心って……じゃあ、無理矢理後継ぎ生ませるようなことしなきゃいいんじゃ……」 「そこは絶対ですから」  社長ははっきり低い声で言うと、突然まっすぐに私を見た。  それは有無を言わさないような目。眼圧がすごくて……目がそらせられない。  そのときまた、頭の中で低いガガガガという音が鳴り響く。
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