2章:平穏でない日々と告白

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 そしてそうしていると、もう一つの問題点に気がついた。そのファンの女性社員たちしかり、羽柴先輩には熱烈なファンが多い。学生時代と一緒だということだ。 あの時から先輩にファンは多かった。羽柴先輩に手を出そうものなら、つるし上げの上、市中引き回しの刑にでも遭いそうなくらいに……。  これは絶対に、羽柴先輩と仕事外で話しているところを見られてはいけない。キスシーンなんてもってのほかだ。あの時見つからなくてよかったと心からほっとしていた。  そんなわけで、私はずっと羽柴先輩がいつ会社にやってくるのか毎日びくびくしながら過ごしていたのだ。  なのに毎日あのエレベータに乗っては、あの日のキスのことを思い出す。やけに顔が熱くなって、ドキドキして完全なる不審者状態。それを隠すために、いつもファイルを持ち歩いて顔を隠した。そし2か月がたつ頃、そんな毎日に疲れてきていた。 (なんで私だけこんな目に……!)  まったく平和じゃない、まったく平穏じゃない日々。こんなに誰かの登場に怯えて過ごすのは、逃走犯か私くらいだろう。
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