12章:外堀の埋まる音がする

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 これ、このままこの人の目見てたら……やばい気がする。  寒いわけでもないのに、背中に冷や汗が流れた。 「あの子も、あなたが相手なら子どもは欲しい、と言ってる。あなたとだけは非常に心も身体も前向きなんです。だから、あなたは身分や家柄など気にせず、健人と結婚し、子どもを……」 「あぁ! 非常にお腹が痛いです!」  私は震える足に力を入れ、慌ててふかふかの椅子から立ち上がった。 「社長申し訳ありません、今日は失礼します!」  そしてくるりと方向転換。社長室から自慢の足でダッシュして逃げた。
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