13章:不安と喧嘩と仲直り

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 部屋に入ると、副社長が申し訳なさそうに眉を下げ、頭をまっすぐと下に下げる。 「ごめん、僕のせいだ」 「イヤ、それは違います!」  それは絶対に違う。社長が言ったことがホントだったとして、副社長が謝ることじゃない。なのに副社長は心底申し訳なさそうに頭を下げたままだった。 「お願いですから顔を上げてください」  私が言うと、副社長は、でも、と呟き、 「僕もね、あれだけずっと健人が好きだった人と結ばれて、もし子どもができて、その子が僕の跡を継いでくれるなら、僕に子どもができなくても良いかなぁって思っちゃったんだ」 とはっきりと言う。  私はあまり副社長のこと知っているわけじゃないけど、前に話した時とか、先輩の話とかも合わせても、副社長は悪い人には思えない。むしろ……絶対にいい人だ。  私もできることなら、この人の力になれればいいのに、とは思う。でも子どものことは……今言われてもどうすることもしてあげられないのだ。
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