13章:不安と喧嘩と仲直り

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 それから、三人で食事をして、私が好きそうなものがあれば副社長は『これも食べなよ』とくれたりした。副社長は、やっぱりお兄さんなんだなぁ、と考える。私は一人っ子だし、兄という存在がいるのがうらやましくはある。  そうか、先輩と結婚したら、副社長が兄になるのか。  それは嬉しい。食べ物で懐柔されている気がしないでもないけど……。  そんなことを考えていると、 「一樹は昔からなんでも譲る癖があったよな」 と先輩が言う。 「まぁ、僕は特別欲しいものってないからね」  その時、思ったことは、副社長はやっぱりいいお兄さんで、いい人だってこと。  そしてそんな風に言う副社長のことを、先輩がちょっと寂しそうに見てるってことだ。 (きっと先輩は、副社長のためにも、早く結婚して子どもが欲しいって思ってるんだろうな……)  そんな先輩の気持ちに気づいて、それがやけに自分の胸を締め付けた。
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