13章:不安と喧嘩と仲直り

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 食べたこともない美味しいご飯にすっかり満腹になって、食事会が散会になった後、私と先輩は一緒に夜道を歩いていた。 「おいしかったですね。あんな高そうなとこ、私だけじゃもう一生行けなさそう」  そう言ったとき、先輩が足を止める。私も足を止めて、先輩を見た。 「俺がいつだって連れてくよ」 「……いいですよ、もったいないし。普通のデートでいいです」 「普通って?」 「ほら、前のラーメン屋台とか」 「うん、あそこもいいよね」  先輩は言い、続けた。「でも、結婚したら、パーティーや会食の場面も増えると思うから」  その言葉に、自分の息が詰まったのが分かった。  やっぱり結婚の話が出ると、私は躊躇してしまう。手放しに、そうですね、なんて返せない。
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