2章:平穏でない日々と告白

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 私はその日も朝からスマホを見続けていた。最近ずっとそうだ。私が検索しているのは、『羽柴健人』その人だ。 「みゆ~、食事中はスマホ禁止」  父に言われて、私はスマホの画面を閉じる。  いけない、いけない。最近いつも見ているから、この調子で注意されることが増えた。 「あ、うん。ごめん」 「大丈夫なの? トラブルとかある?」 「……いや」 「なんか、いつもものすごい顔でスマホ睨んで検索してるよね。困ったことがあったらパパに言うんだよ。いざとなったら職権乱用してでもみゆのこと守るから……!」 「ありがと。でも遠慮しとく」  ものすごい顔をしていたのは、間違いなく羽柴先輩のせいだ。   「そういえば、ホウオウ本社は警視庁の近くだよ。その割に意外に会わないよね」 「へぇ」  話し半分に聞きながら、私は羽柴先輩の事務所の場所も会社の近くだと言うことを思い出した。その割に会わないでいられている。なんていうか、複雑な気分だ。  ごちそうさま、というと、いつも通りにお弁当を作り、家を出た。  結局二か月、あの日からだと二か月半、羽柴先輩とは顔を合わせていない。まぁ、羽柴先輩もあれだけ忙しければ、ホウオウに顔を出すことも少なそうだ。そう思って、私の心は少し落ち着いてきていた。  それはその矢先のことだった。
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