13章:不安と喧嘩と仲直り

9/17
前へ
/302ページ
次へ
 そんな私を知ってか知らずか、先輩は私の唇を撫でた。 「みゆ、うちおいで。みゆが足りなかった」 「……今日は、そういうこと、できないですよ……」  実は今日は、そういうことができない日だ。そう言うと、先輩は、 「それだけが理由で一緒にいたいって言ってるわけじゃないよ」 そう言ってクスリと笑う。「まぁ、したいのは確かだけど」 (素直すぎやしませんか……?)  私は言葉につまった。こんなこともすべて、先輩はいつもまっすぐで……。 「ただ、一緒にいたいんだよ」 「……」 「あ、お腹痛くない? 温めるもの、うちにあったかなぁ。なかったら困るから買って行こうか」  先輩はそんなことを言って歩き出す。先輩って、なんでいつもこんなに優しいんだろう。  私だって、こうやって、ゆっくり普通に、先輩と過ごす時間が好き……。  結婚とか、子どもとか、そういうこと『抜き』に。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

899人が本棚に入れています
本棚に追加