13章:不安と喧嘩と仲直り

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「みゆ、何言ってんの? ……どうして?」  先輩の声が低くなる。 「子どものこと、副社長からも聞きました」 「一樹から『も』って?」 「……」 「まさか社長?」  私は息をのむ。すると先輩は私の頬を撫でる。 「驚かせてごめん。騙してたつもりはなかった。けど一緒でしょ。結婚したら子どもだって考えるわけだし。もちろんできない可能性だって考えてるけど、俺はみゆとしかそういう気も起きないし、子どもも他の女性となんて作る気もない」 とはっきりと言う。 (先輩はもうそんな風に自分だけ決めちゃって……迷いもない)  私は先輩を睨んで言う。 「でも、子どもありきで結婚するのは違うんじゃないかなって思うんです」 「俺は欲しいよ。みゆと俺の子ども」 「それは後継ぎのためですか? お兄さんのためですか?」 「そんなわけないでしょ」  先輩はまっすぐに私を見た。 「純粋にみゆと一緒にいたい。みゆが好きだし、愛してる。みゆと自分の愛し合った証だってほしい。それで、みゆと俺の子どもを望むのがそんなにおかしい?」
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