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「先輩は、高校の時もとびぬけてモテてた」
「みゆだってモテてたよ」
「モテなかったですけど。私は普通にモテてませんでした!」
「俺が潰してたからね」
「なにそれ……」
「知らないのはみゆだけだよ」
意味が分からない、とむっとして返す。
「先輩は足も特別速くて」
「みゆだって速かったでしょ」
「でも先輩は鳳家の次男で」
「みゆだって刑事の娘でしょ」
「刑事はただの公務員ですっ!」
私は怒って返した。
「うそ。みゆのお父さん、連続殺人犯何度も捕まえて、異例の速さで刑事部長になった柊風太だよ」
「なにそれ。お父さんは刑事でも生活安全課のヒラだし!」
「むしろみゆ、そんなことも知らなかったの?」
「先輩、うそばっかり!」
「嘘は何もついてない」
言い返す言葉がなくなって、私は思わず、
「先輩なんて大嫌い! もう別れる……!」
と叫んでいた。
これで、先輩が別れるって言うならそれでいいと思っていた。
さっきから、自分が言ってることも無茶苦茶で支離滅裂だ。
途中から、自分が何を怒っているのかわからなかった。こんな女、先輩だって、嫌に決まってる。
どうせ私はかわいげも決断力もない女だよ……となんだかふてくれされたような感情が頭を回った。
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