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そして先輩は息をつく。
「幸せだなぁって思う。こうして朝からみゆと一緒にいられて幸せ」
先輩がそう言って、私は思わず先輩の胸に額をうずめ、
「私も……」
とつぶやいた。
なんか先輩といるとね、自分が自分じゃないみたい。
昨日だって、あんな混乱気味に取り乱して、自分の意見がまとまらないまま誰かに滅茶苦茶言ったのは初めてかもしれない。
先輩と二人の時は、自分の気持ちが勝手にあふれ出てくる気がする。
そうしていると、先輩はため息のように息を漏らす。私の胸がどきりとした。
「なんでため息つくんですか……」
(私、変なこと言った⁉ いや、呆れられた⁉)
慌てる私に、先輩はまた抱きしめる腕の力を強めると、
「かわいすぎ。もう悶え死にそう」
「……ちょっと意味がわかりません」
「やっと、随分素直になってきたよね。昔はさ、本当に何も言ってくれなかったし」
そう言って先輩は私の髪を撫でる。
「……それは」
「みゆは周りの目ばかり気にしてたからね」
確かにその側面はある。でも…。
「……きっと今も変わってませんけど」
今だって私は人の目を気にしてるのは変わっていないと思う。
二人の時は慣れてきたけど……。
「そうかな?」
「……え?」
「昨日も、一樹の前で抱きしめた時、もっと怒るかと思った」
先輩はいたずらっぽく言う。
私は、う……と言葉に詰まって、
「それは……久しぶりに先輩の顔見て……嬉しかったから」
とつぶやいた。
昨夜は……久しぶりに会って、顔見て、嬉しくて……
一瞬、副社長がいるの、忘れたんだ……。
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