899人が本棚に入れています
本棚に追加
それから父は話し出す。
「今ね、ある事件の捜査をしてて」
「生活安全課の? 特殊詐欺とか?」
私が言うと、父は慌てた様子で、
「えっと、そう、かな?」
と言った。
私はその様子に眉を寄せる。
「それで? どうされたんですか?」
促すように先輩が言うと、父は続けた。
「それでね、ちょこーっと事情があってね。今、うちにみゆを一人で置いとくのが怖いんだ」
できるだけ軽い様子で父は言ったが、どうにも軽い話とは思えなかった。
「……お父さんは?」
「僕は大丈夫だよ。これでも一応刑事だし。……でもみゆは違うでしょ」
なんとも全貌が見えないだけに、腑に落ちない話だ。
すると、羽柴先輩は、
「それなら、落ち着くまで、みゆさん、うちに住むのはどうですか」
と父に言った。
「えぇ……!」
(確かにもう少し離れたくないとは思ってたけど……)
戸惑う私に、
「落ち着くまででいいから、そうしてもらえると僕も安心なんだけど」
と言う。
最初のコメントを投稿しよう!