14章:同棲スタート?

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「事件の詳細は話せないんだけど、報道に出てる範囲で」 「もしかして町田の連続婦女暴行殺傷事件ですか?」 先輩が聞いて、父は頷いた。 「実はパパ、捜査一課とか……ほら、ドラマとかであるでしょ? そういうとこの部長、えっと警視正ってやつでね」 「殺人事件とか捜査する?」 「うん」  刑事の役割がよくわからないのは、父はあまり刑事ものや警察密着もの、そしてニュースを見たりしなかったし、仕事の話もしないから、私も自然にそうなったという理由がある。  大人になってみると、余計に父が仕事のことは言いたくないのかな、くらいの雰囲気は自分でも感じていた。  羽柴先輩は、 「みゆのお父さん、もうすぐ警視長っていわれてるんだよ」 と言う。 「よくわかんない」 「……まぁ、現場を指揮するほうの人ってことだよ。娘にも知られてないって、むしろそっちがすごいですけどね」  先輩が言うと、父は苦笑した。  でもなんだかやけに緊張してきた。掌に汗がにじむのが自分でわかる。  喧嘩した時に先輩が言ったことも思い出した。殺人犯を逮捕とかって……。  むしろ今まで知らなくてよかったかも。そんなの聞いてたら、いくら心臓があっても足りないだろう。 「詳細は言えないけど、パパ、容疑者にちょっぴり逆恨みされてて」 「逆恨みって……」  私は眉を寄せる。そんなの、私のことより自分のことを心配してほしい。 「パパは大丈夫。だけど、とにかく相手は僕の顔も知ってるし、いつ家が割れてもおかしくないかなぁって」  そして続ける。「しかも、さっき羽柴先生が言ったみたいに、『連続婦女暴行殺傷事件』の容疑者だしね」  緊張してごくりと息をのんだ。  そんな私に父はいつもと違う真剣な面持ちで、 「わかった? もし、みゆに何かあったら、パパは、ママにも顔向けできないんだよ」  そうはっきりと告げた。
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