15章:ずっと一緒に

3/7
前へ
/302ページ
次へ
 宮坂さんに、小さな声で、 「この際だから、付き合ってることもバラしといたほうがいいね、とか言い出したんです。だから社内でも普通に話しかけるよ、って」 私は続ける。「先輩のやりたいようにやってる感がすごいんですけど……」 「それにOKしたの⁉」  宮坂さんが驚いたように言う。 「今一緒に住んでるし、会社も近いし……バレるのも時間の問題だから……。それなら付き合ってることくらいはいっそ先にばれたほうがマシかって……。後でバレるより、自分から堂々としているほうが印象悪くないって、先輩も言ってて。それは確かにって思ったから。ちょっと先輩の口車に乗った感はあるんですけど」 「そうなの」 「先輩が、ちょうどSPもいるから、そのことがきっかけでいたずらされることもないだろうって」 「そう。でも、……よかったわ」  宮坂さんは意外なことを言う。 「え?」 「あなたがそうやって恋心なんて隠す必要もないもの、隠さないでもいいって思えるほど先生のこと好きになれてるならよかった」  私はその言葉に思わず苦笑する。  でも、あの人が彼氏と知れ渡れば、仕事やりにくいのは確かですけどね……?  宮坂さんは続ける。 「結構うまくやってるみたいじゃない」 「まぁ……先輩のペースに少しずつ慣れてきたというか……」 「あんなに、あの人は特別、って言ってたのに」 「人は『慣れる生き物』だってこと……今まで知りませんでした」  私がつぶやくと、宮坂さんは楽しそうに笑った。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

888人が本棚に入れています
本棚に追加