16章:俺と彼女と彼女の父親(side羽柴)

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 3年になった時、1年のみゆが陸上部に入ってきて、最初はみゆの走る姿を見て気になった。きれいなフォームだな、と思った。どこか、自分のそれに似ている気がした。  自分から誰かに興味を持つははじめてだったので戸惑いがあったのは事実だ。  ただ、みゆのほうも俺のことが好きだろうって思ってた。俺は外面だけは良かったし、顔も整ってると自覚している。でも、みゆは周りの目ばかり気にして、絶対にみゆから近づいてこなかった。  少々強引にいけば……無理やりにでも身体を重ねれば、きっと彼女が落ちるのは時間の問題だろうと、今思えば、そんな最低なことを考えていたと思う。  そしてあの日。  強引に行こうとして、飛び蹴りされて、入院したあの日。  あの瞬間。  俺の脳裏には、ある一つのシーンが流れていた。 ―――女の子と手をつないで必死に走ったあの日のことだ。
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