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どうしてあんなものを急に思い出したのだろう。
悩んでいたが、答えは案外すぐに見つかった。
「みゆが……本当に、申し訳ありませんでした」
みゆの飛び蹴りでけがをして入院している時、そう言って俺の入院先の病院にやってきたのは、みゆの父親で刑事の柊風太だった。
「……いや、みゆが悪いんじゃないですから」
みゆの飛び蹴りが原因の事故だなんて、誰にも言ってなかった。みゆもたぶん誰にも言わないだろうと思った。自分は慌てる彼女に口止めをしたのだ。
それにみゆが悪いんじゃないって、俺自身はわかっていたから。
強引にみゆを抱こうとした自分が完全に悪い。
でも、みゆの様子からわかったらしいみゆの父は、みゆに告げずに、俺の入院先の病院に現れたのだ。
刑事と言うのは、勘が鋭いものなんだろうと、その時、そんなことを思った。
「俺が悪いんです」
そう言った俺に、でも入院費だけは出させて、親御さんにも話はつけてあるから、とみゆの父はなおも頭を下げた。
「わかりましたけど……本当に、それ以上はやめてください」
「あぁ、ありがとう」
そう言って顔を上げたみゆの父親の顔をまっすぐ見たとき、思い出したのだ。
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