16章:俺と彼女と彼女の父親(side羽柴)

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 そしてそれを思い出して俺が気づいたことは、  あの時の刑事がみゆの父親で、女の子がみゆだったってこと。  みゆの父親は、俺に向かって、また、まっすぐに頭を下げた。 「なかなかお礼を言えなくて、申し訳なかった。だからきちんと言わせて。本当にありがとう……」 「そんな……」  自分はそんなこと、今まですっかり忘れていたのに。  するとみゆの父は目を細めて、きみはみゆを助けてくれた恩人だよ、と笑った。  その言葉に胸が痛む。  確かに自分はあの時、女の子を助けた。それがみゆだった。  助けたのは、下心も何もない、まっすぐな子ども心からだった。  でも、今は、どうだ。  彼女のことを無理やりにでも自分のものにしようとした結果が、これだ。  父のこともあったかもしれないが、どうして自分は不貞腐れたような、自分の怒りやストレスを他者にぶつけるような毎日を過ごしていたのだろうと恥ずかしくなった。  あの頃から考えると、自分はずいぶん変わってしまったような気がする。 「こちらこそ、すみませんでした……」  俺は思わず頭を下げる。  本当に謝るべきは俺だ。……そうせずにはいられなかった。「俺は……無理やり彼女に……」  最後まで言うより先、その言葉を切ったのはみゆの父親だった。
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