16章:俺と彼女と彼女の父親(side羽柴)

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「君もまだ、自分で思っているより子どもだ」 みゆの父親は笑って続けた。 「だからね……もし、二人が大人になってもう一度会ったとき、このこともきちんと二人の中でこなせて……。きみも、みゆも、『ずっと一緒といたい』と思ったら……。その時は、みゆのことをきみに託すよ」 「……はい」  その言葉はきっと、未来への約束。 「そうなったらきっと亡くなった妻も喜ぶと思うしね。あれからずっときみにお礼を言いたがっていたんだよ」  みゆの父親は、安心させるように笑いかけてくれる。  そしてもう一度真剣な顔になると、 「だからもしあの子に対して、何か後悔しているなら……いつか胸を張ってあの子の前に現れることのできるくらいの人間になりなさい」 ときっぱりと言った。  その言葉に、自分が大人としてみゆの父親に対等に扱われたような気がした。  ごくりと息を飲み、その言葉を噛み締めながら頷く。  すると安心したように優しく笑ったみゆの父親は、 「これはね、あの子の父親として、僕がきみにあの子を託すための宿題だ。もちろん、途中で降りてもらっても構わないから。その時はさ、僕が最後まであの子を守るし、父親としてその覚悟はしてるから」 と言った。その言葉にどきりとした。  そのとき自分は…… いつか胸を張って、みゆを守れる存在になって、みゆともう一度会いたいと思った。  そして、いつかみゆと子どもを作って、自分もみゆの父親みたいな父親になりたいって、そんな風に思ったんだ……。
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