最終章:やっぱり先輩の愛はいろいろと重すぎる

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―――そしてあれから数か月。  玄関チャイムが鳴って、我が家にやってきたのは、副社長、こと、一樹さんだ。  最近出張さえなければ、休みの日はよくうちに顔を出してくれる。 「飛行機が遅れて、遅くなっちゃった。これ、お土産」  一樹さんは、そう言ってテーブルの上に重そうなお土産の箱をおいてくれる。 「ありがとうございます。今回どこ行ってたんですっけ?」 「モンゴル」 「……モンゴル」  なんだか嫌な予感がする。そう思いながら、その箱に手をかけた。  開けてみると、50cmくらいの金ぴかの熊の像(多分純金だ)が入っていたのだ。 「って、これなんですか!」 「現地で熊の足がお守りになるって聞いたから。とりあえず一番効果ありそうな金の熊を買ってみた」 「金の熊って! この兄弟のプレゼントセンスどうなってんの……⁉」  ニコニコする一樹さんに断るわけにもいかず、ありがとうございます、と小さく告げて、その熊を触ってみる。  モンゴルからはるばるいらっしゃい、お疲れさまです、と心の中で熊に話しかけた。もちろん熊からの返事はない。心なしかこんな異郷の地に連れられてきて、熊は不機嫌にも見えなくなかった。
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