最終章:やっぱり先輩の愛はいろいろと重すぎる

4/12

889人が本棚に入れています
本棚に追加
/302ページ
―――そう、あの婚姻届けを提出してからのあの5日間。  あのサバイバルな5日間の中で、私は妊娠したのだ。  妊娠の知らせを聞いたとき、先輩は喜びすぎて1週間ほど様子が変だった。(普段もまぁ、変なのだが本当にあの時は変だった。)  一樹さんも、先輩のお父さんも、うちの父も大喜びで、私はそんなみんなの様子を見て、お腹の子がここまでみんなに祝福されてこの世に生まれてこられるなら幸せだなぁって思っていた。 「俺とみゆの子どもだからかわいいに決まってる」 先輩はきっぱりと言い切る。 「父さんもすっごい楽しみにしてるよね。あれは、じじバカになるね」 「あんな人だと思わなかったよ」  先輩はつぶやくように言う。先輩と先輩のお父さんは、仲が悪かった、と聞いていた。  でも、私が妊娠して、それからできるだけ先輩と一緒にお父さんと会うようになって、徐々に二人は打ち解けるようになってきたのだ。 「みゆちゃんのおかげだよね。二人が打ち解けてよかった」  一樹さんは微笑んで言う。私は、私はなにもしてないですけど……、とつぶやいた。  結局、先輩とお父さんは、話す機会が少なかったことですれ違っていたのだろうと思う。  人はお互いに会って話さないと誤解がそのまま大きくなってすれ違っていくことは、私と先輩との経験からもなんとなくわかってたから。
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

889人が本棚に入れています
本棚に追加