最終章:やっぱり先輩の愛はいろいろと重すぎる

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 一樹さんが帰った後、 「一樹、嬉しそうだったね」 先輩が思い出したように言う。 「はい」  妊娠したこと、自分のことのように喜んでくれた一樹さんを見て、私は多少なりとも、一樹さんの力になれたような気もして嬉しかった。先輩も同じように思ったのかもしれない。  一樹さんのため、じゃなくても、自分たちの結果が大事な人のためになれるなら、嬉しい。  先輩はまた私にキスをする。ちゅ、ちゅ、と軽いキスを何度も交わした後、一瞬絆されそうになって、そういえば、と聞きたいことを思い出して私はまっすぐに先輩を見た。 「ところで先輩。今日、産婦人科の検診についてきて、先生と、なにをあんなに話しこんでたんですか」 と聞いた。  実は今日は午前に妊婦検診があって、毎回先輩が一緒についてきてくれるのだが、今日は検診のあと、先輩が先生に二人きりで聞きたいことがあると言ったキリ、なかなか外に出てこなかったのだ。 「生活面で気をつけなきゃいけないことをしっかり聞いてたんだよ」  先輩は優しい顔で笑う。 「え?」 「妊娠中の食べ物。ほら、必要な栄養素でみゆがたべられそうなものは全部入手しといたから」 「そう、なんですか……」 「あとはフォローかな。これからお腹が大きくなれば、もっと足元とか見えにくくなるし、俺がきちんと支えるからね」  そう言われて泣きそうになった。 「……ありがとうございます」  色々あるけど、こんな優しい人と結婚出来て……私は幸せだ。  先輩とこうしてずっと一緒にいられること、心から幸せに思う。
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