番外編:子どもができても先輩の愛はいろいろと重すぎる

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番外編:子どもができても先輩の愛はいろいろと重すぎる

―――あの朝のことはよく覚えている。  前日から続いた陣痛にもう何度も意識を失いそうになって、痛すぎて何度も悪態をつく私の手を、健人さんは離れずにずっと強く握ってくれてた。  やっと次の日の朝に生まれてたその子の顔を見たら、健人さんは私より泣いて、かわいい、ありがとう、お疲れ様、愛してる、って何度も言って私と赤ちゃんを抱きしめたのだった。  私は知らなかったのだけど、一樹さんも、両家の父親も廊下に勢ぞろいしていたようで、廊下は秘書やら私のSPやらも含め、なんだか物々しい雰囲気だったと助産師さんは笑って教えてくれて、私はちょっと恥ずかしい思いをした。  ただ、それから少しして私が落ち着き新生児室まで行ったとき、男性陣が全員目を真っ赤にして、新生児室で眠るあかりを嬉しそうな顔をしながら見つめていた姿を見て、私の恥ずかしかった思いは帳消しにすることにした。  名づけには悩んでいたのだけど……結局生まれてきた子どもの顔を見たら、健人さんが『あかり』にしよう、と言って、私もぴったりだなぁって思って頷いた。  この子には、明るくて、周りを照らすような子になってほしい……そう思った。  そんな希望が込められている名前の通り、あかりは明るく元気に育っていると思う。もうすぐ3歳。親の欲目もあるだろうけど、あかりは本当に明るい子だ。 ―――ただ、一つ問題があるとすれば、あかりはこの『特殊な環境』が『普通』だって思っていることだろう……。
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