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その時、思い出したように、健人さんが言った。
「今日、あかり、一樹のとこ行くんでしょ?」
「うん! 一樹が早く来いってうるさいから行ってあげるの」
あかりの言葉は早かった。もうすぐ3歳の今ではもうすっかり大人顔負けの言葉を話す。
さらに一樹さんのことは何度言っても呼び捨てにしている。それを一樹さん本人も喜んでいるからなかなか直らない。
「あかりは一樹のこと好きだね?」
「うん! あかり、将来、一樹と結婚するんだぁ」
純粋でかわいいあかりの言葉に思わず笑う。きっと一樹さん、これ聞いたらまたメロメロになるだろうなぁ、と思っていると、隣で健人さんは眉を寄せた。
そして幾分か低い声で、
「……でもあかり? 法律的に『直系血族又は三親等内の傍系血族』は結婚できないんだよ」
と言う。
「なにそれ」
「子どもの無邪気な思いを全部潰さないでくださいよ!」
「ごめん、ちょっと嫉妬しちゃった。普通、こういうときパパと結婚する、じゃない? ねぇ、どう思う?」
「ちょっとの嫉妬じゃないですよね」
私が思わず言うと、健人さんは冗談だよ、と苦笑した。さっきは本気の目、してたけどね。
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