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お酒のせいもあるのか先輩の目は熱っぽくて、私はその目に絆されそうで、目をそらす。すると、先輩はまたエレベータの時のように私の顔を無理やり自分の方に向けた。
「目をそらさないで」
「……」
「ねぇ、この部屋に入った時、少しも、この可能性を考えてなかった? みゆには『未必の故意』があったと思ったんだけど」
「……そんなわけない」
私は首を横に振る。でも、先輩の目は、全部お見通しとばかりにこちらを見ていた。
ちがうちがうちがう!私がキスを思い出していたのは、先輩がヘンなことしたからで、
先輩を思い出したのは、あの事があったから先輩に会うのが怖かったからで……!
先輩の手が私の手を握る。する、と指を這わされると、ぎゅう、と熱を持った指が手に絡みついてきた。
「みゆ。もう一度だけ、キスさせて」
「なんで……」
「みゆだって、自分の気持ち、確かめたいでしょ。本当は自分がどう思ってるか」
もうやだ、もうやだ。こんなの、やだ!
私は先輩を睨みつける。しかし、先輩は、私の目を捉えて、そして優しく目を細めた。
なんで、この人はいつも……。
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