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「みゆ?」
先輩の声が聞こえて、目を開けると、大人の先輩が目の前にいた。
あ、そうか。あれから、タクシーでまた自宅に送ってくれたんだ。
今日はなんだか、自宅までタクシーで行ったり来たりしている気がする。
「あ、ありがとうございました。ウトウトしちゃって……。それに、結局またタクシーで送ってもらって……先輩疲れてるって言ってたのに」
「あんなの嘘だよ」
先輩ははっきり言う。
「え……」
「運転手さん、申し訳ありません。少し待ってていただけますか?」
先輩はそうタクシーの運転手さんに告げると、私を連れてタクシーを降りる。
「家、変わってないね。高校時代みたい。ま、あの頃は徒歩だったけど」
「……」
その声に、思わず押し黙ってしまった。
先輩もまだ、覚えてたんだ……。私はずっと覚えてた。さっきも夢に見た。これまでも思い出さない日はなかった。
「指輪はうちに置いとくよ。その代わりにこれ」
そう言われて掌にカードを渡される。
「カード?」
「うちのマンションのカードキー」
そう言われて、慌ててそのカードキーを先輩に突き返す。
「いいいいいいいりません!」
「まぁ、そう言わずに。倉庫とでも思ってくれたらいいから」
「あんな大きな倉庫も、高級な倉庫も、必要ありませんから!」
(この人、ホント何考えてんの⁉)
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