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4週間かけ、彼らはティーフヴァルトにやって来た。フロイデが森の奥に
ある木でできた一軒家のドアをたたいて「こんにちは」と言うと、中から褐色の肌と水色の目を持つ8歳の少年が出てきた。シカの皮で作られたベストに、草で編んだ靴という姿だ。
「はじめまして。私はフロイデ・ノースオルカ。あなたは?」「オレはハリー・ティーフヴァルト。よろしく」二人は握手をするのを見ていたクォウが「混血の者か」とつぶやくのが聞こえた。
「族長!初めて会う者にそのような」「私にそのようなことを言うのなら、
お前もここに住むがよい。戻ってくることはできないぞ」
フロイデはハリーと倒木に座り、父の言葉を聞いていた。「あそこにいるのは私の父さんなんだ。ごめんハリー、嫌な気持ちになったでしょ?」
「謝ることはねえ。言われ慣れてるから」と答え、彼はフロイデを自宅の
2階へと連れて行った。シナモンやバター、リンゴの甘い香りが流れてくる。
ハリーがドアを軽くたたいて「母さん、聞いてくれ。ノースオルカから女の子が来たんだ」と母に声をかける。
息子と同じ目を持つ赤髪の女性が「はじめまして!アリシアよ」と嬉しそうにフロイデの手を握る。そして彼女の前にリンゴのパンを乗せた皿を置いて
「食べてみる?」と聞いた。「はい」と答えて口に入れると、バターとリンゴ
の甘みに笑みが浮かんだ。
「おいしいです」「嬉しい」アリシアとハリーがそう言うと、褐色の肌の大柄な男性がドアを開けて部屋に入って来た。
「おかえり父さん」「ただいまハリー、アリシア。ウサギとシカを獲ってきた。血は抜いてあるから、保存しておく」男性はフロイデに気づき、「はじめまして。おれはウーフ、ハリーの父親だ」と彼女に笑みを見せる。
「はじめまして。フロイデ・ノースオルカです。よろしく」気持ちが温かく
なるのを感じながら、食事を終えて父のところへ戻る。
「父さん。私はハリーやその家族と、一緒に過ごしたいと思っています」
それを聞いた父は激高し、「混血の者と一緒になりたいなら、ノースオルカから出ていけ!」と叫んだ。
フロイデは森の出口に向かって駆けだし、石に座って涙をこらえる。肩を
たたかれて振り向くと、ハリーが立っていた。
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