透明美術館

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 わたしは、なにも、わるくない。  必死に脳内で言い訳を並べようとするものの、出てくるのは涙だけだった。朝の通勤列車はどの時間帯よりも他人に関心をもたない。幸か不幸か、マスクをしていることもあり、わたしは鞄からタオルハンカチを取り出すと露出している顔の部分を覆った。  ――降りよう。  言い訳は後から考えよう。とにもかくにもこんな状態で月曜日の朝から出社なんて無理だ。列車のスピードが遅くなっていき、やがて停まる。ドアが開いた瞬間に、自分でも信じられない力で人混みをかき分けて駅のホームへ落ちるように飛び出した。  バランスを崩しながらもなんとか踏みとどまる。勢いで空を見上げると、信じられないくらいに青い。悔しい。わたしは物語の主人公ではないから、落ち込んだからといって空は雨を降らしてくれないらしい。
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