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9
入ってきた女子生徒を見て露木は驚愕した。金髪の巻き髪でもなければ、派手な見た目の生徒でもないのだ。
2つに結んだ黒髪はブレザーの肩に垂れ、黒いフレームのメガネをかけている。少し控えめな目元にすらっと伸びる鼻筋、ぽてっとした下唇は洋紅色だった。リボンはきっちり上まで留まり、格子柄のスカートは膝小僧をすっぽりと覆っている。露木は彼女の顔を見て、記憶の中から同じ人間を探し出した。
4月に開かれた全校朝礼で、彼女は生徒会役員として部活動の紹介を行っていた。マイクを通して数多くの部活を紹介していた彼女が今、一条の前で怯えたような表情を浮かべている。
「今日は、どこまでするんですか。」
「この間教えたことの復習。こっち来い。」
彼女は言われるがまま一条に近付いていく。身長は160に満たないだろう。彼を見上げる形で前に立つと、一条は彼女の腰に手を回した。スカートの上から触れるように掌を抑える。やがて彼女も一条の腰回りに手を回し、物欲しそうな表情で彼を見上げた。
徐々に2人の顔が近付いていく。一条は顔を傾けて首筋を浮き彫りにさせると、彼女のふっくらとした唇にキスをした。
その時に露木が感じたのは、師弟関係だった。自らの技を披露する師匠に、焦ってついていこうと奮闘する弟子、彼女は明らかに後者であった。
彼女の唇を食べてしまうように舌を捻じ込むと、女性の体が一度ぴくんと跳ねる。唾液を交換する2人の唇から漏れたのは彼女の息だった。
「はぁ…んん…」
部活動紹介では見られなかった、溶けるような表情。彼女は目を瞑ったままうっとりとしている。微かに唾の混じる音も聞こえた。
数分ほど深いキスを交わし、ゆっくりと顔が離れる。彼女は既に息が切れている。その様子を見て一条はニヤリと笑った。
「もう濡れてんだろ、実里。」
「はい…もう、触って欲しい、です…。」
実里と呼ばれた彼女は顎の先を胸元に沈める。すると一条は彼女のブレザーをゆっくりと脱がせると、再び唇を重ねる。リボンを解きながらまた何度も唾液を交わしていく。
露木がその時に感じたのは、一条の手付きが優しいということだった。
決して乱暴ではない。ただ触れるように、血管の浮き出た腕が撫でるように実里の体を這っていく。その都度彼女は恍惚の表情を浮かべていた。
ワイシャツを剥ぎ、実里の肌が露わになる。白いレースのブラジャーから溢れる肉は深い谷間を作っていた。今にも溢れそうな乳房はラップを張った上に牛乳を垂らしたように白い。その表面を指先でなぞると、再び実里の体が跳ねる。
深く抱きしめるように彼女の背中に手を回し、ブラジャーのホックを簡単に外す。布を取り外すと支えられていた乳房が弾けるように飛び出した。牛乳の塊の上に明太子を磨り潰したような乳輪、その上で乳首がはっきりと感触を硬くしている。露木は音を殺して唾を飲み込み、2人を見ていた。
「あっ、ああ…気持ちいい、です…」
そっと背に触れながら、身を屈めて一条は乳房の先端を口に咥えた。舌先でごろごろと転がしているのだろう。一条の肩に手を置いて実里はびくびくと反応を示している。彼は追い打ちをかけるようにもう片方の乳房を掌に収めた。それでもはみ出してしまう脂肪を揉み込み、こねるように回していく。
いつの間にか露木は見入っていた。性行為の経験も無ければ、他の誰かがしているところも見たことがない彼女にとって、今現在資料準備室で行われる放課後の秘め事はあまりにも刺激的であった。
「い、一条先輩、もう…」
「あ?もう、何だよ。」
乳房から唇を離し、一条は実里を見上げる。いじらしい姿を見て一条は興奮しているのだろう。お互いの息は荒れていた。
「さ、触って欲しい、です…今日こそはいけると思んです…」
凛としていた生徒会役員の表情は既に崩れていた。大きな氷は一条の熱で溶けているのか、それとも実里の体内から滲む熱で溶けているのかは、誰にも分からなかった。
彼女の言葉に再びニヤリと笑い、長いスカートの裾の裏に手を忍ばせる。彼の腕が下がると実里の足元に白い布が落ちた。
その中に手を戻す。一条がゆっくりと立ち上がると、彼女は徐々に足を横に開いた。やがて天井を仰いだ実里は声を出さずに息を吐いた。
「うーわ、凄い濡れてる。」
突き放すように一条は吐き捨てると、スカートの中で腕を動かした。その裏側で行われていることが何なのか、露木は見入ったまま考えていた。
やがて聞こえてきたのは、水溜まりの表面を乱すような水の音であった。幼い子ども達がいたずらに水の上澄みを掻き混ぜるような、微かな液体の音。一条はスカートに忍ばせた左腕を徐々に激しく動かし始めた。
「あっ、ああ、いや、ああっ」
何かを否定するように首を横に振って、実里は情けない表情を浮かべて喘いでいる。やがて水の音が激しくなると、彼女は彼を抱き寄せてから言った。
「せ、先輩、いきそうです…」
一条は何も答えない。ただ黙ったまま、時折実里の耳たぶや首筋を舐めながら、腕の動きを早めている。その時に露木が気が付いたのは実里の動きであった。
動かす手に合わせて彼女は腰を前後に振っている。汚れを擦り付けるようにグラインドさせながら、長いスカートを揺らす。男性経験のない露木にも、彼女の絶頂が近いということが分かった。実里は苦しそうな表情を浮かべて野生のような声を放ち、その数秒後に全身を震わせた。
「あっ、ああっ…」
力を失って実里は彼にもたれる。陸に打ち上げられた小魚のようにぴくぴくと痙攣しながら、彼女は声を漏らしている。すると一条はスカートから手を抜いて彼女を優しく抱き寄せた。実里の秘部に触れていない方の手で、彼女の後頭部を撫でる一条の横顔はとびっきり柔らかかった。
妖しく微笑んだり、高圧的な態度を取っている彼はそこにいない。子供の過ちを心から許す親のように暖かく抱きしめている一条を見て、露木は自分の心に妙な感触を覚えた。それが何かは分からなかった。
「先輩…」
吐息交じりに実里は自ら唇を求める。不恰好なキスをして、彼女は焦ったようにスカートを脱ぎ始めた。すらりと伸びる白い足に小ぶりな尻が橙の光に照らされ、美術館にある彫刻のようだった。
それをこちら側に向けると、くんと腰をあげる。あろうことか実里は自らの手で秘部を裂くように開いた。
露木はその時、人間の恐ろしさを感じた。
どんなに取り繕った人でも欲望には敵わない。生徒会役員として凛とした表情だった彼女は、ものの数分で尻を露わにしたのだ。
一条は何も言わず、ポケットからビニールの小袋を取り出す。包装を剥いで透明な避妊具を抜いてから、スラックスのファスナーを下ろす。咄嗟に露木は目を逸らした。経験の無い傍観者の彼女にとって、その避妊具が何なのかが分からなかった。
放課後の資料準備室で陰部を晒し、避妊具を当てがって露木に背を向ける。彼の背中でどのような行為が行われているかは不明だったが、少しして繋がったようだった。
「ううっ、ああ…気持ちいいです…」
唸り声をあげて実里は棚の縁を掴む。小さく幼い手は震えていた。
「あっ、あん、いやぁ…」
「どうだ、随分違うだろ?」
「はっ、い、全然…」
豊満な乳房を揺らしながら喘ぐ彼女を見て露木は被っていた布をぎゅっと握った。恐怖、不安、彼女の胸の中でどんな感情が渦巻いているのかは本人でさえも分からないが、どこかで羨望に近いものがあるのかもしれない。
「はぁ、実里、いくぞ。」
「はい…ください…」
腰の動きが速くなっていく。露木は改めて異常な光景を目の当たりにしているのだと自覚していた。男女2人の性行為と性的絶頂を目撃しているのだ。
ぴたっと腰の動きが止まる。一条は微かに震えながら、大きく息を吐いた。欲を吐き出す人間は抜け殻のようで、2人はそのままの体勢で首を器用に動かしてから深いキスを交わした。
吹奏楽部の不揃いな音色が遠くから聞こえていたが、露木は一切耳を貸すことなく絶頂した2人を眺めていた。
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