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16
結合部が擦れる度、粘液の混ざり合う音がする。一条は緒川茜の日に焼けた両足を持ち上げて腰を前後に振っていた。彼女を突く度に太ももの表面についた肉の波が揺れる。
緒川と関係を持って既に1年が経過していた。
どこからか持ち寄られたカーペットの上で緒川はみっともなく両足を開き、控えめな乳房を揺らしている。薄く焦げたような肌の色、少しだけ肉の乗った腹を掴んで勢いよく突き刺していく。
「あっ、いきそう。いくっ。」
彼女の全身が痙攣すると、膣内がびくんと畝る。その刺激が後押しするように、一条は言葉を切るように息を吐いて深々と射精した。
細い脈の中を駆け巡る白い分身が避妊具の中に収まる。荒い呼吸を繰り返しながら、一条はゆっくりと陰茎を引き抜いた。膨れ上がった薄いゴムの先端が力無く項垂れる。縮れた黒い毛の隙間から、別の白い粘液が溢れた。
「ああ…気持ち良かった。ありがとうね。」
ポケットティッシュを数枚手に取り、ひどく濡れた陰部を拭き取る。つい数秒前まで淫らに喘いでいた彼女だったが、もう切り替えた様子だった。彼女の内側から溢れた愛液をしつこく拭って、資料準備室の隅にあるゴミ箱へ放り投げる。
淡白な緒川だったが、性交渉の際には全裸になるのが基本だった。何事も形から入るらしく、衣服を脱いでいないと興奮しないのだという。
「ねぇ、一条さ。」
隣のクラスの彼女は黒いパンツを履きながら言う。
「ん?何。」
「こういうことしてるけど、彼女とかいらないの?」
尻の割れ目に布が食い込んでいく。やがて格子柄のスカートがそれを覆ったのを見届けて、一条は自分の濡れた陰毛をティッシュで拭きながら答えた。
「まぁ欲しいけど、相手がいないからな。」
そうなんだ、と言って緒川はブラジャーを乳房の下に回していく。少しばかり黒ずんだ乳の頭が見えなくなる。
一条は後ろの窓から差す橙の光を浴びながら考えていた。数十人の女子生徒に性教育を行い、緒川はセックスで絶頂を迎えることができないという悩みを数ヶ月かけて解決させた。そんな肉体関係が続く中で、誰1人として恋心を抱いた者はいない。我ながら不思議だと彼は考えていた。
ワイシャツのボタンを留めながら一条の方を向いて、緒川は細い目を閉じるとニコッと微笑んだ。
「結構一条のこと狙ってる子、多いよ?気になる子とかいないの。」
「うーん。特にいないかなぁ。」
そう呟いた後に一条はハッとした。何気なく頭の中に浮かんだ人の顔と名前を振り払うように、拭いたばかりのティッシュを丸めて赤いボクサーパンツに足を通す。
数分前まで生まれたばかりの姿で乱れていた彼女は、一度制服を身に纏ってから徐々に崩し、スカートの丈を短くしていた。何かに納得しながら頷いて彼女は言う。
「まぁ、気になる子がいたら教えてよ。紹介してあげるから。」
それじゃ、と付け加えて緒川は平たい学生鞄を肩にかけて資料準備室の扉を開けた。六石棟の廊下に出て角を曲がっていく彼女の背中を見届けながら、一条はぼんやりと考えていた。
何故関わりを絶った露木萌華が浮かぶのか、その疑問は解決することはなかった。
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