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60
貪るようなぎこちないキスはしらばく続いて、徐々に体が寄っていく。やがて2人は抱き合って唾液を奏でた。
少しして唇が離れていく。全身がばくばくと鼓動を発する。露木はその深いキスだけで腰回りに熱い靄を宿していた。たまらずに露木は一条の手を握ってベッドまで誘導した。
枕に背をつけて座り込んだ彼の上を這うように覆って、再びキスを交わす。彼の輪郭を掌で確かめながら、彼の体温を指先で感じながら、柔らかい雲のようなベッドの上で2人のキスは続く。彼女はその時既にショーツの底が重くなっているのを感じていた。
たまらずに露木は一条のジーンズの舟形に触れた。厚い布は熱を持って大きな芋虫のように、なだらかに隆起している。それに指先が触れると一条は全身を小さく震わせた。
「い、痛かったですか。」
「いや、急だったからさ…」
膨れ上がったジーンズの表面をなぞりながら、露木は大きく息を切らしながら考えていた。この裏には熱と血液が一点に集中している陰茎がある。保健体育の教科書で見たイラストの実物が、そこにある。
しかし彼女はどこか恐れを抱いていた。
「えっと、あの、先輩。まだ、直接は…あれなので…」
見たことも触れたこともない人間の器官に触れるというのは、ひどく恐ろしいものだった。ただ欲望に駆られただけで知識は何もないのである。もしかしたらそのまま触れて傷つけるかもしれないと、露木は不安に思った。
すると一条は息を荒くしながら微笑んで、ゆっくりと顎の先を胸下に沈めた。
「分かってる。俺も直接は触らないから。」
そう言った一条の右手は彼女の腹の下を潜って橙のロングスカートの裏側へ消えていく。やがて彼の指先がショーツの微かな膨らみに触れると、露木は切ない声を漏らした。
その反応は身体的なものだけではなく、好きな人に触れられているという精神的なものもあった。
白に桃色が淡く滲んだショーツはクリスマスデートのために何日もかけて選んだものであった。その布越しにすっかりと濡れた膣の表面をなぞられ、びくんと露木の体が跳ねる。恥ずかしげもなく大きな喘ぎ声が部屋の中に響いていく。
露木の頭の中は空っぽだった。その代わり胸の中は性欲のみで支配されており、他に何も考えられずただ興奮していた。それでも構わないと思えたのは、今触れている相手が一条であるからだった。
「あっ、先輩、気持ちいい…」
「俺も、気持ちいいよ…」
恐る恐るジーンズの上を撫でる。厚い布であるにも関わらず、勃起した陰茎のシルエットが手に取るように分かっていた。先端の雁首に触れると、彼は腰を浮かせて吐息を漏らす。快感で歪んだ表情を見て、彼女は少しだけ嬉しくなった。
覚束ない手付きではあるものの、自分の手で一条が喘いでいる。その事実が何よりも嬉しいものであった。
しかし彼も黙ってはいなかった。
「やっ、ちょっと…ああっ…」
「萌華、もうこんなに濡れてるのか。」
「そんな、だって、先輩が…」
ショーツの底はすっかり重く、分泌された粘液のせいで一条は膣の表面が手に取るように分かった。膨れた小さい陰核を指先で摘む。それを少しだけ引っ張って、優しく回す。露木はまだ自慰行為で触れていなかった自らの秘部を愛撫され、体の表面に毛虫が這っているような感覚に陥った。
その指の動きが速くなっていく度、臀部を蹴り上げるような快感の波が腰の前にやってくる。露木は彼の陰部に手を添えたまま、ぎゅっと目を瞑って喘いでいた。
「だ、だめ、いきそう…」
全ての神経が秘部に集中する。それを見て一条は優しい声をかけながらも、熱を持ったクリトリスを指で挟みながら、愛撫を辞めなかった。
「いいよ。我慢しないで。」
「先輩、いっちゃう、いくいく…」
言葉尻を待たず、露木は一条に覆い被さったまま絶頂を迎えた。自慰行為の時とは比べ物にならないほどの快感が全身を揺らして、絶え間なく吐息が溢れていく。
それでも腰に纏わり付いた暑い靄は消えてくれなかった。一度の絶頂で触発されたかのように、彼女は一条の体の上を登って唇を重ねる。自分への愛撫に答えるように、彼の膨らんだ陰茎をジーンズの上から両手で撫でた。露木は見様見真似だったものの、その形に沿って擦っていく。少しだけ彼女が力を加えると、2枚の布に包まれているはずのペニスがびくんと跳ねた。
獲れたての小魚が陸に打ち上げられたような、誰かに驚かされて防衛本能が働いたような、微かな痙攣は陰茎から全身へ伝染していく。絶頂を迎えたばかりの彼女はその時、人間の恐ろしさを知った。
出会った当初は高圧的な態度を取っていた彼が、デートの際に無邪気な子どものように笑っていた彼が、今はベッドの上で秘部を触られながら目を瞑って快感のため息をついている。
もし2人の秘部が直接絡み合ってしまったら、一体どうなってしまうのだろうか。
ただ布の上から触り合っているだけで2人は我を忘れて喘いでいる。彼に陰核を布越しに摘まれただけで絶頂を迎えた彼女は、一条の陰茎が挿入されるとどうなってしまうのだろうと、少しばかり不安を覚えた。突かれる度に魂が抜けてしまうのではないか。今まで16年間蓄積された思い出が全て飛んで行ってしまうのではないか。
まるでそんな不安を掻き消すように、露木はジーンズの上からペニスを半分だけ持った。強引に向きを変えると、まるでテントを張ったようにジーンズの上が山形になる。それを両手で持ちながら、辿々しい愛撫を続ける。
しかし次の絶頂は再び露木であった。
先程とは違って、一条は濡れたショーツの表面を2本の指の腹で強く擦っていく。陰核は布の裏であちこちに向きを変えながら小さく震えている。一度の絶頂で敏感になっていた露木は、羞恥心の欠片もなく高らかに声をあげた。
「ダメ、またいっちゃう、ああっ」
体を仰け反らせた露木は2度目の絶頂を迎えた。腰を上下にくねらせながら、マラソンを完走した後のように呼吸を乱す。彼への愛撫を止めてしまった露木は眉尻を下げて、濡れた声で抗議した。
「先輩、ずるいです…」
「何がずるいんだよ。」
「だって、私だけパンツの上から、だから…」
「そりゃしょうがないだろ、スカートの上から触ったらスカートも汚れるかもしれないし。」
「不公平ですよ…」
唇を尖らせて不満そうに呟く。すると彼女は思い立ったように目を見開いた。
「そうだ、先輩。ジーパン脱いでください。」
「え?な、何でだよ。」
「だってそっちの方がフェアじゃないですか。なんか、私だけパンツの上からっていうのはずるいです。」
吐息を漏らしながら彼女はジーンズのファスナーを下ろした。腰の前に着いたボタンを外して、彼の黒いボクサーパンツが顔を覗かせる。下着の一部を見て露木は咄嗟に目を逸らした。
「恥ずかしいなら脱がせるなよ。」
「い、いいから、早く脱いでください。」
「分かったよもう…」
そう言って腰を浮かせ、もぞもぞと動きながらジーンズが腰から離れていく。足首から抜け出したジーンズがベッドの端に置かれて、彼女は一条を見下ろしながら思わず呟いた。
「先輩…足の毛、少ないですね…。」
「いやそこかよ。」
「なんか、女の子みたい。剃ってるんですか?」
「生まれつきだよこれは。」
「そうなんですね。でもこれから生えてきますよ。大丈夫です。」
「いや別にコンプレックスじゃねぇよ。人のコンプレックス勝手に決めるなよ。」
少しだけ語気を強めながら、彼は膨れた陰核を爪の先で軽く弾く。たまらずに露木はびくんと跳ねてしまった。そのせいで彼の素足の上にぺたんと座り込んでしまう。それをいいことに露木は自らの秘部を一条の太ももに押し付けながら、抵抗するように言った。
「もう先輩は触らないでください。私だけ触りますから。」
「おいそれじゃ俺がフェアじゃねぇじゃん…あっ…」
「わ、すごく熱い…。」
柔らかいボクサーパンツの上から陰茎に触れると、先程までは感じなかった熱が掌に伝わった。その熱を馴染ませるように、大きく膨らんだペニスを布の上から擦っていく。
この大きさのものが自分の中に入ってしまったら、そう考えてしまった露木は本能に身を任せていた。
少し筋肉質な彼の大腿部に自分のショーツの表面を擦り付け、ぐっと体を伸ばす。欲望を抑えることができなかった彼女は不器用に唇を重ねて、舌先をねじ込みながら言葉をみっともなく零した。
「先輩、好きです…大好き…」
彼の返事を待つことなく濡れた声で言葉を紡ぐ。唾液が絡み合う音、ショーツの裏で擦れる膣が濡れる音、ボクサーパンツの上から愛撫する摩擦の音、お互いの秘部に宿った熱。徐々に橙のロングスカートの裏に纏わり付いた暑い靄が形になっていく時だった。
「うっ、萌華、ダメだ…出そうだ…」
「いいですよ、出してください…」
薄い下着の中でペニスを立たせ、激しく上下に擦っていく。段々と先端が膨らんでいく。何度目か分からないほど淫らに唇を重ねた時、一条は塞いだ口から呻き声を漏らして全身を震わせた。
びくんと体が何度も跳ねる。薄い下着の裏で暴れ回る熱の棒は、少しして痙攣を止めた。
しかし2人は変わらずにキスを交わし続けていた。激しく射精した彼の秘部に触れたまま、大腿部に濡れて重くなったショーツを擦り付けながら、2人はその日一番長い時間のキスをした。
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