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第一章 運命の始まり
源 真輝(みなもと まさき)は、焦っていた。
(何だ、この体調不良は!)
今度のパーティーに着る、新しいフォーマルの仕立て具合を見に、テーラーへ出かけた真輝。
店では全く、こんな変調の兆しもなかったのに!
普段なら、運転手付きの高級車で行き来する道だったが、その日はなぜか一人でふらりと歩きたくなった。
電車に揺られて駅で降り、二本の足で店へ入った。
『源さまのために、腕を振るいました』
『まぁまぁの、いい出来だ。これなら人前に出ても恥ずかしくない』
『ありがとうございます』
『仕上がったら、屋敷へ届けてくれ』
こんなやりとりをして、入った時と同じように店を出た。
それから、再び電車へ乗ろうと歩いていると……。
(胸が苦しい。……吐き気がする)
電車で、人ごみに揉まれたせいだろうか。
頭から、血の気が引いていくのが解る。
冷汗まで流れてきた。
(しかし、この私が道端で嘔吐など許されない!)
総資産額5兆円を誇る源家の当主として、そんな無様は晒せない。
歯を食いしばって、真輝は手近なカフェに入った。
せめて、腰を下ろしたかった。
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