雨恋

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「おはよ、航大」 彼女は僕の左肩に手を置いていた。 制服越しにも分かる滑らかで長く細い手。 「また、同じクラスになったね」 そう。彼女とは小学校6年生の時に4組で同じだった。 中学校一年生はそれぞれA組とB組だったのだが、二年生では晴れて二人共F組だった。 「1、よろしく」 理緒ー、と友達に呼ばれて、彼女はグーッと親指を突き立てたまま、僕の声も聞かず走っていった。 「2年間なのに…」 僕はぼそり、と呟いた。 多分、生物の中で一番耳のいい生き物(僕は知らないけど)でも聞き取れない音量だ。 可愛げのあることに、彼女は間違いを残して走り去って行った。 少年少女が通うこの学校は、二年生から三年生のクラス替えがない。 だから三年生はこのクラスのままなのである。 だけど、彼女は忘れていたみたいだ。  芳井(よしい) 理緒(りお)、僕の初恋の人。
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