雨恋

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「えー、春は様々なことがあって…」 かったるい校長の話を聞き流して、ボケッと目の前を見つめる。 教員の紹介があった後、長い長い校長の話が始まった。 ちなみにF組の担任は野村藤吾とかいう理科の先生だった。 まあ別に担任など誰でもいいので関係ない。 それより… ここからは理緒が見えない。 男女並ぶ場所が別れていて、僕は窓側なので全く女子の列が見えない。 だから、早く始業式など終わってほしかった。 教室に戻れば、左斜め前に彼女がいる。 視界の中に入る。 ささやかな恋心に向き合える。 今はそんな時間を、一秒…1分…と奪われているのだった。 外では柔らかな霧雨が降っている。 僕の心も比例して、静かな雨模様だった。
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