日下の記憶

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エッチが下手だという彼女は別に下手なんじゃなくて慣れていないだけで、ベッドの上で可愛く乱れた。 芽生は香苗ではなかった。 当たり前だ。 最初からわかっていたはずだ。 だけど芽生を抱くことで久しぶりに人間として生きている実感が湧いた。 呼吸の乱れた芽生がぐったりと横たわる隣で、俺はいろいろな感情に支配されていた。 香苗への想いが溢れる。 同時に芽生への罪悪感も押し寄せる。 そして、香苗はいないのに俺は生きているんだということを嫌というほど実感させられ胸が苦しくなった。 「どうしたんですか?」 芽生が心配そうに覗き込んでくる。 自分でも知らないうちにポロポロと涙が溢れていて、目元を手で覆った。ぐちゃぐちゃした気持ちが体を蝕んでいく。それなのに、気づいた芽生は心配そうに背中を擦ってくれ、その手は優しくて温かかった。 温かさがほんの僅かな希望のように心にぽっと灯る。久しぶりに感じた体からわき上がる感情に、自分自身どうしていいか戸惑いを隠せない。 涙が止められない。 どうしていいかわからない。 大丈夫だと優しく抱きしめてくれる芽生に、癒しを求めたのかもしれない。 芽生はとても優しかった。
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