手を伸ばせば遥かな恋

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7月23日。水曜日。 朝早く久留米市を出発し、博多空港から大阪伊丹空港行きの飛行機に乗り、そこで乗り換えて福島へと向かった。 福島空港はウルトラマン生みの親、特撮の神様、円谷英二氏の故郷・須賀川市と玉川町にまたがる地方空港だ。館内のあちこちにウルトラマンが展示されていた。 留学生は僕を含め3人。 今日から2週間、郡山市内のホストファミリーの家にホームスティする。 「もしかして瀬里くん?」 エレベーターで一階に下りたらひとりの女性が笑顔で駆け寄ってきてくれた。 「増谷フミの孫の増谷あかりです」 「古賀瀬里(こが せり)です」 「こっちが弟の大智(だいち)……あれ?大智?」 女性がキョロキョロと辺りを見回した。 自分でホストファミリーを探すことも可能と知ったのは2ヶ月前。 増谷フミさんに思いきって手紙を書いた。 それから3日後、増谷さんの孫のあかりさんという女性から突然電話が掛かってきた。 がちがちに緊張して何を言ったのか全く覚えていない。 「大智、ちょっと可愛いい子なんだけど」 「あ、そう。興味ない」 「そんな態度だから嫌われるの」 「は?姉さんには関係ないだろう」 お土産やさんの店頭に並べられてある野菜やお菓子を眺めていた男性の腕をむんずと掴むと半ば強引に連れてきてくれた。 僕より2つくらい年上かな?大学生かな? 「初めまして古賀……」 「瀬里だろ、いちいち名乗らなくても知ってる。荷物それだけか?」 「あ、はい。あとは宅配便で送りました」 「そんなこと聞いてない。重いだろう?寄越せ」 ぶっきらぼうに答えるとリュックサックを代わりに背負ってくれた。 「ありがとう」 「ほら行くぞ」 ぷいっと顔を逸らし、そそくさと歩き出した。
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